「九谷焼井出製」は、明治時代から昭和初期にかけて九谷焼の発展に大きく貢献した井出善太郎による製陶所およびその作品群を指します。井出善太郎は、九谷焼の製造・輸出・技術革新において重要な役割を果たしました。

井出善太郎と九谷焼の発展

• 家業の継承と事業拡大
  井出善太郎は、明治30年（1897）に19歳で家業を継ぎ、翌年には金沢に支店を開設しました。明治33年（1900）には九谷陶磁器株式会社を設立し、社長に就任。明治36年（1903）には輸出を目的として神戸に支店を設け、海外市場への進出を図りました。  
• 原材料の改良と技術革新
  明治39年（1906）、井出善太郎は綿谷平兵衛、石崎蕃らと共に九谷原石破砕株式会社を設立し、寺井町湯谷に陶石粉砕工場を設けました。これにより、従来の原始的な製法から脱却し、品質の高い坏土と素地の製造が可能となりました。  
• 海外展開とデザインの革新
  明治41年（1908）には米国サンフランシスコに支店を開設し、弟たちを経営にあたらせました。井出善太郎自身も隔年で渡米し、現地の流行を取り入れた商品を設計し、寺井で生産する方式を採用しました。この方式は昭和16年（1941）まで続けられました。  
• 地域インフラへの貢献
  井出善太郎は、産業の発展には通信・運輸・交通が重要であると考え、北陸線に寺井駅の開設を推進しました。また、加州自動車運輸会社を設立し、寺井駅・小松駅間の定期運輸を開始するなど、地域の発展にも尽力しました。  

井出製陶の作品と評価

井出善太郎商店製の九谷焼は、明治から昭和初期にかけての輸出向け作品が多く、豪華な色絵や金彩を施した大花瓶や深鉢などが特徴です。これらの作品は、能美市九谷焼美術館などで所蔵・展示されています。

現在の評価と展示

井出善太郎の業績と作品は、能美市九谷焼美術館をはじめとする施設で紹介されています。また、九谷焼の歴史や技術を学ぶ体験ツアーなども開催されており、井出善太郎の貢献が現在も評価されています。

井出善太郎の活動は、九谷焼の品質向上と国際的な評価の確立に大きく寄与しました。彼の革新と努力は、現代の九谷焼の礎となっています。

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